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 KAGE-KAGE

 

:: ポリエステル、木、タッチセンサー、プロジェクター、コンピューター等
:: 3000× 4800 × 3000(可変)
:: [ interactive installation ]
:: 1999年

 

日本語の「かげ」という言葉は、物体の投影という意味での「影」を示すと共に、「存在」を意味する単語として用いられる。例えば、全く存在しえないということを「影も形もない」と表現したり、非現実的な現象である幽霊は、影を持たないと昔から信じられている。それは、影がいつも、物体がそこに在るということの証しになっているからである。けれども、この作品では、投影された三角形の影達は、主であるはずの円錐形のオブジェに手を触れた途端、魚や鳥に姿を変え、多彩に変色し、動き出す。
実は、この影達は、全てCGによって作り出された偽物である。CGによる偽物の影と自分自身の本物の影が同時に同じ平面上にあることを発見したとき、彼は自分の影と存在を再認識するのである。

前作『KAGE』は、そもそも子供の影絵遊びから着想を得た作品ゆえか、観客がインスタレーションに興ずる様子は、遊び場で夢中になる幼い子供達を連想させる。
我々は、ここでもう一つ新たな「現実感」の作用に気が付いた。「共同現実感」とでも言うべき、複数の観客が同時に作品にコミットした際生じる、「共有された場」特有のリアリティーである。
『KAGE-KAGE』では、この「共有された場」を立体的な空間に拡張し、様々な現実感の多元的融合を試みた。

平行に向き合って立てられた二枚の壁がある。その内側に取り付けられたいくつもの円錐形オブジェに観客が触れると、二つの壁の間で、三角形の影が様々な変化を見せる。正面の壁から飛び出した魚のシルエットが後方の壁の中に波紋と水音を残して飛び込んだかと思えば、後側の壁から「ハロー!」と言って手を振る人影に、前面の壁にも現れた人影が「ハロー!」と返す。実体を持たないヴァーチュアルの影に加えて、壁と壁に挟まれた「間」が、存在しないはずの物体に不思議なリアリティーを与えるのである。

ともあれ、「かげ」と「かげ」の隙間に入り込んで、そこに在るあなた自身の「存在」を確かめてみてもらいたい。

 

 

 

 

 

 

 


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